大判例

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東京高等裁判所 平成3年(行コ)84号 判決 1992年1月30日

控訴人

藤山満江

被控訴人

人事院

右代表者人事院総裁

弥富啓之助

被控訴人

人事院事務総長中島忠能

右被控訴人ら訴訟代理人弁護士

齊藤健

右被控訴人ら指定代理人

及川まさえ

白井国男

山根進

押田彰子

井上哲

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一控訴の趣旨

一  原判決を取り消す。

二1  控訴人の昭和五九年一〇月八日付け行政措置の要求のうち「控訴人を薬剤業務全般に就かせること、及び、控訴人を他の薬剤師と同様に宿直勤務に就かせること」について、被控訴人人事院が昭和六二年一一月三〇日付けでした右要求は認められない旨の判定を取り消す。

2  控訴人の被控訴人人事院に対する昭和五九年一〇月八日付け行政措置の要求のうち「控訴人を医薬品情報提供業務に復帰させること」について、被控訴人人事院事務総長が昭和六二年一一月三〇日付けでした右要求を却下する旨の処分を取り消す。

第二事案の概要

一  本件事案の概要は、次のとおり補正するほか、原判決の事実及び理由中の「第二 事案の概要」(原判決二枚目裏三行目(本誌五九四号<以下同じ>93頁下段19行目)から同七枚目表七行目(95頁2段25行目)まで)に記載されたとおりであるから、これを引用する。

1  原判決二枚目裏五行目の「採用され、」(93頁下段24行目)の前に「厚生技官(薬剤師)として」を加える。

2  同二枚目裏九行目の「昭和五九年一〇月八日付けで」(93頁下段26行目)の次に「、国家公務員法八六条の規定に基づき、その勤務条件に関し、」を加える。

3  同二枚目裏末行の「DI業務」(94頁1段3行目)を「医薬品情報提供業務(以下「DI業務」という。)」に改める。

4  同三枚目表三、四行目(94頁1段5~6行目)を次のとおり改める。

「なお、控訴人は、同日付けで右の(一)ないし(三)の要求とともに「昇格昇任について不平等な扱いをせず、速やかに控訴人を昇格昇任させること」を内容とする要求をしたが、被控訴人人事院事務総長は、適法な行政措置要求に当たらないとして、昭和六二年五月二七日右要求を却下した。」

5  同四枚目裏五行目の「ピーク時間帯である」(94頁3段11行目)の前に「調剤の」を加える。

6  同五枚目表二行目末尾(94頁3段26行目)に「全自動錠剤分包機の操作ができなければ、調剤室で調剤を行うこともできない。」を加える。

7  同七枚目表四行目の「QアンドAは、」(95頁2段20行目)を「DI業務の一つである医薬品に関する質疑及び応答(以下「QアンドA」という。)は、」に改め、六行目の「編集会議」(95頁2段23行目)の前に「病院発行の医薬品情報誌の」を加え、同行の「時任」を「時任技官」に改める。

二  証拠関係は、訴訟記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する(略)。

第三争点に対する判断

一  当裁判所も、控訴人が昭和五九年一〇月八日付けで国家公務員法八六条の規定に基づき被控訴人人事院にした本件要求につき、被控訴人人事院がなした(二)及び(三)の要求は認められない旨の判定及び被控訴人人事院事務総長がなした(一)の要求を却下する旨の決定に控訴人主張の事実誤認の違法はなく、控訴人の請求をいずれも棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり補正するほか、原判決の事実及び理由中の「第三 争点に対する判断」(原判決七枚目表九行目(95頁2段27行目)から同一七枚目裏八行目(98頁4段21行目)まで)に記載されたとおりであるから、これを引用する。

1  原判決七枚目表末行の「原告は、」(95頁2段31行目)の次に「調剤過誤の問題があって、」を加え、同七枚裏三、四行目の「調剤業務従事禁止の時期は、弁論の全趣旨により、その余は」(95頁3段5~7行目)を「調剤業務従事禁止の点は、甲第三号証、弁論の全趣旨による。その余の事実は」に改める。

2  同七枚目裏六行目の「原告は、」(95頁3段10行目)の次に「被控訴人人事院に対し」を加え、同八枚目裏一行目の「甲第八号証により、」(95頁4段13行目の(証拠略))を「甲第八号証による。」に改める。

3  同九枚目表四行目の「午後〇時三〇分ころ」(96頁1段6行目)を「午後一時三〇分」に、八行目の「時間を要している。」(96頁1段13行目)を「時間を要しており、このため、控訴人が調剤室に出る時刻は通常午後二時前後であり、そのころには調剤業務はそのほとんどが終わっている。」に、八、九行目の「当事者間に争いがない事実、」(96頁1段14行目)を「甲第二二号証、乙第一号証の一ないし四、」にそれぞれ改める。

4  同九枚目裏五行目の「更に、」(96頁1段29行目)から八行目の「認めることはできないのであって、」(96頁2段3~4行目)を削り、同一〇枚目表一行目の「外来の」(96頁2段11行目)から二行目の「午後一時二〇分ころまでに」(96頁2段12行目)までを「外来の調剤のピークが終わる午後二時ころまでに」に改め、五行目の「他に、」(96頁2段15行目)の前に「控訴人は、作業台が一台しかなく、他の二人の薬剤師が処理を終えるのを待つため、注射薬の払出しが遅れるともいうが(もっとも、後に右の供述は誤りであると訂正した(甲第八六号証)。)、作業台が足りないのが右払出しが遅れる原因であると認めるに足りる証拠はなく、」を加える。

5  同一〇枚目表末行の「証人原」(96頁2段30行目<人証略>)の前に「甲第一九、第二〇号証、」を加える。

6  同一〇枚目裏六行目の「錠剤などの調剤」(96頁3段10行目)の前に「検薬の容易な」を、一〇、一一行目の「昭和六二年一一月一九日、」(96頁3段18行目)の次に「朝の業務連絡会に出席すること、」を、同一一枚目表六、七行目の「以上の事実は、」(96頁4段1行目<人証略>)の次に「甲第三号証」を、七行目の「乙第一号証の一ないし四」(96頁4段2行目の(証拠略))の次に「、第三号証の一、二」をそれぞれ加える。

7  同一一枚目表一〇、一一行目の「検薬を拒否し、注射薬払出し業務が長引くこと等もあって」(96頁4段7~8行目)を「朝の業務連絡会にほとんど出席せず、調剤に対する検薬は自己の評価をおとしめるものであるとしてかたくなに拒否し、また、注射薬払出しに手間取ることもあって」に、同一一枚目裏一行目の「当たろうとしなかった」(96頁4段10行目)を「当たろうとはせず、注射薬払出しが終わると図書室や宿直室で過ごすことが多かった。」に、一、二行目の「証人原(第一回)、乙第一号証の一ないし四、」(96頁4段11行目<人証略><証拠略>)を「甲第二二号証、乙第一号証の一ないし四、第三号証の一、二、証人原(第一回)、弁論の全趣旨による。」にそれぞれ改める。

8  同一二枚目裏一行目の「病棟担当払い出しを要求したのに」(97頁1段20~21行目)を「病棟担当の調剤業務を希望したのに」に、四行目の「病棟払い出しをさせても機能しないと判断したことが」(97頁1段25~27行目)を「控訴人に担当させるのは無理であるとして応じなかったことが」にそれぞれ改める。

9  同一二枚目裏八行目の「原告のこれまでの業務従事の実態等から、」(97頁2段2~3行目)を「控訴人の従事してきた業務の内容や控訴人の業務に対する取組み姿勢等からみて、」に改める。

10  同一三枚目裏六行目の「前記のとおり」(97頁3段7行目)の次に「調剤過誤問題があって」を加え、同一四枚目表五行目の「右説示のとおり原告のこれまでの業務従事の実態等に照らすと、」(97頁3段26~27行目)を「右説示のとおり長期にわたり調剤業務に従事していなかったものであり、仮に控訴人の主張するように過去に調剤過誤の事実がなかったとしても、調剤過誤が直ちに患者の生死・健康障害にかかわるものであることを考えると、控訴人としては、業務研修の過程を経て調剤、その他の業務と順次薬剤業務全般に進むのが相当であって、」に、同一四枚目裏四、五行目の「前述のように」(97頁4段15行目)から七行目末尾(97頁4段19行目)までを「かえって、控訴人は、職場における対人関係の修復を試みようとはせず、また、誤薬事故防止のために薬剤科長から指示された検薬についてもかたくなに拒み続けてきたのであって、その職務遂行に当たり、上司の指示・指導に従い、同僚等と協調することを含め、積極的かつ真摯な努力を傾けてきたとは認め難く(甲第一九、第二〇、第二二、第二三号証、弁論の全趣旨)、控訴人の右主張は失当である。」にそれぞれ改める。

11  同一六枚目表五行目の「被告人事院に裁量権の逸脱ないし濫用を認めることはできない。」(98頁2段14~15行目)を「違法の点はない。」に改める。

12  同一六枚目表六行目の「5(98頁2段16行目)を「3」に改める。

13  同一六枚目表九行目の「二」(98頁2段22行目)を「三」に改める。

14  同一六枚目裏一行目の「医薬品情報誌を発行しており、」(98頁2段28行目)の前に「毎月一回」を加え、二行目の「薬剤科に」(98頁2段29行目)を削り、五行目の「グループに入れて」(98頁3段4行目)の前に「控訴人の同僚との対人関係を考えて」を加え、七、八行目の「原告に対し、同年六月四日の編集会議に出席するよう指示し、更に、」(98頁3段8~10行目)を「控訴人から更に要請を受けて、」に改め、同一七枚目表一行目の「証人原(第一、第二回)、」(98頁3段18行目)の次に「甲第二四号証、第七四号証、」を加える。

15  同一七枚目裏五行目の「1の事実によれば、本件要件のうちDI業務への復帰との要求は」(98頁4段15~16行目)を「前記のとおり、病院当局は、控訴人を昭和四八年以来DI業務に従事させてきたが、DI関係資料を上司に提出したこともなかったため、昭和五五年七月右業務従事を中止させたこと、控訴人は、同年一一月被控訴人人事院に行政措置の要求をしたところ、いったんはDI業務に復帰させることを前提に業務研修が一部実施されるようになったものの、昭和五七年七月病院当局において右業務研修を中止したこと、その後控訴人は同年一二月の行政措置の要求で再度控訴人をDI業務に復帰させることを求めたこと、右要求に対する判定においては、控訴人において復帰の前提として実施された業務研修における初歩の段階の業務も遂行できなかったことを理由に業務研修が中止されたものであるため、病院当局が控訴人をDI業務に復帰させなかったことは首肯できるとされたこと、その後病院当局は、控訴人の業務従事の状況をみながら指導を行っていたところ、昭和六一年一二月その指導を強化するため控訴人のDI業務を含む諸業務を実施させるべく具体的に計画を立て指示を行ったこと、昭和六二年三月にはその指示内容を文書にして控訴人に手交し指示を繰り返したことが認められるのである(甲第二号証、第六号証、第八号証、第一一号証、第一二号証、証人原(第一、第二回)、弁論の全趣旨)。そうしてみれば、本件(一)の要求については」に改める。

二  よって、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大石忠生 裁判官 渡邉温 裁判官 犬飼眞二)

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